dragon_ddh
button_w_r_japanese陰と陽

「有は無より生ず」と老子が「道徳経」で説いているが、陰と陽は「無」から生じるといわれている。万物は、形ある天地から生じ、その天地は無より生じる。「無」とは、何もないという意味ではなく、人間の認識を超越した無限の存在であり、全てのものを生かしているという。 
考えごとのない心静かな時は、「無」に近い状態 [QUIET MIND]=「無心」となり、陰と陽が完全に調和するのである。日常生活では、平静、愛、慈悲など思考することなく感じる状態は「無心」といえる。心静めて、雑念をはらう禅の思想に類似していると思う。例えば、驚愕ー非常に驚いた時に、頭の中がまっしろになるなどと表現するように、その間は何も考えられず言葉もでず、ただ静寂と沈黙の状態になる。短い間でも、意識は長く感じるはずである。
 古来、賢人達が不老長寿のドアは「無心」から開かれると説き、人はこの境地に達しようと瞑想する。空のグラスはいつか満たされる。
 古典では、山の麓の陽の当たらない場所=北の方角を陰とし、陽の当たる上の場所=南の方角を陽とした。陰は、冷、水、女、地など受動、陽は、温、火、男、天など能動にわけられ、相対する性質でありながら固定することはない。全てのものは、これらの不変作用の組み合わせ、調和で構成されている。そして、天と地の間に這う、立つ、泳ぐ、飛ぶという形で生かされているのである。
 太極拳は、天と地、つまり陰と陽の作用が私達のエネルギーを調和させ、それが完全なものになるほど健康を得られる。電池のプラスとマイナスがぴったり接合すれば、電流が発生するようなものである。日々の練習は、体力の強化(身)はもちろん、私達をとりまいている環境(心)にも敏感に反応する。それには、全てのものに通 じる「気」の鍛練が重要となる。